ルート:突坂尾根~白馬岳~杓子岳~白馬鑓ヶ岳北稜~白馬鑓ヶ岳~猿倉
日程:2018年4月27日(金)~5月2日(水)
参加者:Lスミ、マノ、カワジリ、キタノ、カネコ、サイトウ
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きっかけ
ある事故報告書を読んでいて初めて「突坂尾根」を知った。白馬岳から黒部峡谷へと延びるその尾根を地図で見て、その長大さ、秘境性にとても魅力を感じた。調べてみると昔はそれほど珍しくもないルートであったようだが、近年の記録はかなり少ない。GWはここに行こうと前々から考えていた。
突坂尾根だけではさすがに味気ない。今年の冬山の集大成の合宿でもあるので、登攀を混ぜたいが、白馬岳主稜はありきたりすぎていてあまり面白くないし、せっかくサイトウさんついてきてくださるのだから少し攻めたルートを行きたいなあ…。などと考えながら、登山体系を見ていると、「白馬鑓ヶ岳北稜」が目に入った。これはいい。白馬岳主稜のより人が入っていなくて、より難しいバージョンのルートである。登り甲斐がありそうだ。
こうして、突坂尾根から白馬岳へ抜け、杓子岳まで縦走。そして白馬鑓ヶ岳北稜を登り白馬三山のピークを踏む、という計画が出来上がった。
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4月27日(金)
カネコと筆者は昼行バスで富山駅へ行き、ステーションビバーク。お誂え向きの宿泊地があり、快適な夜を過ごす。他の部員はサイトウさんの車で宇奈月温泉へ。
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4月28日(土)
宇奈月温泉の手前の駅でサイトウさんたちと合流。筆者にとっては去年の年末合宿以来1年ぶりの宇奈月温泉である。宇奈月温泉駅から黒部峡谷トロッコ鉄道に乗り込み、新緑の黒部峡谷の風を浴びながら終点笹平駅まで。
いざ出発、と9日分の食糧の入ったザックを背負う。その瞬間、筆者のマカルーが「ブチッ」という音を立て、肩にかかるザックの荷重バランスが崩れる。ザックのショルダーベルトが切れた…。スリングで応急処置をして出発するも、なんとなく具合が悪い。幸先の悪いスタートである。
800mまでは鉄塔をつないで進んでいく。関電の方が道を作っていくださっているおかげでスイスイ進む。ここは比良かと錯覚してしまうほど歩きやすい道だった。
それ以降は、藪漕ぎになる。下部は雪が無いためひたすら藪漕ぎである。初日は覚悟していたため何ら驚きはなかった。今日の行程さえ終われば雪が出てきて、藪漕ぎから解放されるはず…。そう思って黙々と漕ぐ(この合宿の全日程で思い続けることになる)。
1200mで雪をつなげて歩くことができるようになってきた。安堵する。カネコとキタノの調子が悪そうなので、今日はここで泊まることに。文登研直伝のビーコン捜索を伝授して、本日の行動は終了。
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4月29日(日)
今日からは快適な雪歩きができると思いウキウキ。突坂尾根の核心は昨日の藪漕ぎだと思っていた。しかし、突坂山を越えたところで、再び藪が出現する。しかも昨日の藪よりも格段に濃密なものだ。薄い尾根にびっしり藪が生い茂っている。袖を捲らないと暑いが、袖を捲ると腕が傷だらけになってしまうというジレンマ。結局全員腕を傷だらけにしながら、進んでいく。アイゼンを藪に持ってかれそうになる部員も続出した。読図にも手間取り散々な気分になる。
藪セクションを突破したと思って雪の上をノロノロと歩いていると、再び藪が現れる。この日はその繰り返しだった。ある程度予想はしていたが、ここまで雪が少ないとは…。つらい。
キタノの体調が引き続き優れないようなので、この日は猫又山手前1500m地点で宿泊。
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4月30日(月)
ここまでくると流石に藪も少なくなって、快適な雪歩きが多くなってきた。藪がないとなんと順調なペースで進むことだろう。27日と28日の二倍以上のペースで進んでいく。
それでも、頻度は減ったが藪は出てきてその度に削られる。
途中、重荷を背負っての藪漕ぎで、カネコが膝を痛めたようなのでカネコの分の団体装備を他の部員で分配する。
全員疲労を抱えながらも、なんとかこの日の目標の白馬岳頂上宿舎まで到達する。そこから筆者だけ白馬岳のピークを踏むために空身で出発。他の部員も誘ったのだが疲れてしまっているようだ。突坂尾根完登。
頂上宿舎では偶然にも京大山岳部さんも宿泊しており、挨拶を交わした。
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5月1日(火)
この日は白馬岳頂上宿舎~杓子岳~双子尾根~樺平の行程のはずだったが、+白馬鑓ヶ岳北稜~杓子岳~双子尾根~樺平が追加されることになる。
5月2日の午後から天気が崩れる予報。ただでさえ、杓子岳から見た白馬鑓ヶ岳北稜は雪が少なかった。一回荒れて、それが雨だった場合、登攀はより困難なものになるだろう。ほとんど藪漕ぎになってしまうような。白馬鑓ヶ岳北稜をどのタイミングで登るか、はたまた諦めるか、悩んだ。しかも、サイトウさんは少し体調が優れないらしい……。
最終的に、沈殿してでも登攀を試みるという決断を下した。
なんとか登攀したい旨をサイさんに伝えて、相談した結果、途中で泊まる前提のもと今日出発して、2日の午前中、天気が崩れる前には帰ってくる、というプランを組んだ。サイトウさんの体調と相談しつつ、無理そうだったら引き返す。
10:00、樺平から、出発。取り付きからバーティカル藪漕ぎを強いられる。雪がついていたら快適なダブルアックスだっただろうなあ、と思いながら頑張って漕ぐ。しかし、ペースは悪くない。標高を上げるにつれ徐々に雪をつないで登ることができるようになってくる。時々怖い箇所が出てきたがロープを出すほどでもない。ちなみにサイトウさんの体調は登攀を始めて2時間ほどで完治したらしい。
中間地点の「軍艦ピーク」には出発してから三時間ほどで到着。このペースで行けば、19:00には樺平へ戻ることができそうだ。俄然やる気が出てきた。軍艦ピークから先は、危険な箇所も少なく、ほとんど藪漕ぎも出てこなかった。ただただ頑張って標高を上げる。
16:00白馬鑓ヶ岳山頂。ワンデイで樺平へ帰れることを確信する。
18:30樺平。テントキーパーを任せていた二回生も驚いていた。我々もこんなにはやく帰ってこれるとは思わなかった。
この日はなぜか血便がでた。
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5月2日(水)
この日は猿倉まで下るだけである。朝は少しゆっくり起きて、のんびり準備する。天気が崩れる前に猿倉に着ければよい。
この日もやはり、藪漕ぎが出てきた。これで今回の合宿では全日程で藪漕ぎをしたことになる。もうやりたくない。さすがに。
11:30猿倉着。バスの運転手さんが少し待っててくださった陰で、何とか滑り込む。
座席についてふと香ってきた自分の体臭に思わず顔をしかめた.。
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合宿を終えて
サイトウさんの力は大きかったが、この強度の合宿を部員全員でこなせたことは素直に嬉しい。30kg近いザックを背負って、連日猛烈な藪漕ぎが続く合宿だった。後輩君達はよく頑張ってくれたと思う。
白馬鑓ヶ岳北稜では、サイトウさんの実力にはまだ敵わないことを実感した。特にルーファイ力と度胸では、まだまだ遠く及ばない。精進しなくては。
サイトウさんには心からお礼を申し上げたい。こんな藪漕ぎだらけの不愉快な合宿についてきてくださり、本当にありがとうございました。