2022/03/19
コサカ、スミ
※随時加筆予定
握りしめた拳
そっと開く掌
青色の国民健康保険証
被保険者氏名に記載されているのはもちろん大好きなママの名前
とうとうたどりついちまったんだな
無職という名の、荒野に
(to be continued...)
道端で見つけた可憐な花を添えて...
スミ
12/29-1/2
年末の鹿児島中央駅付近に────
赤い60Lマカルーを背負った挙動不審な男がいたはずだ。
真顔と薄笑いの反復横跳び。
あるいはノイローゼ。
そう、その男は2021年初冬から慢性的な抑鬱症状を患っていた。
彼は探していたのだ。
自己同一性のど真ん中に穿たれた虚空と、等量の何かを。
だから鹿児島へ来た。
それなのに──────。
底の抜けたヤカンにいくら水を注いでもちっとも水はたまらない。
ただ、通過していくだけだ。
同じように。
胸の真ん中のぽっかり空いた穴にいくらエモい情報や体験を注いでも、それはただの情報として通り過ぎていくだけだった。
かつてそこから発露されていた感情。
私はどこへ置いてきてしまったのだろう。
自我が収縮していく。
ウニの体のように闊達で鋭敏だった感性が、のっぺりした球体になる。
絶えず同調を要求された。
必死に笑った。
削られたなあ。
主体性は死んだ。
いや、自らの手でなぶり殺しにした。
怒り、悲しみ、喜び、哀切、嫉妬、憎悪、愛、狂気、────美しい。
もう、俺には何もない。
「動機を下さい」
いま私の願いごとが
かなうならば動機がほしい
この背中に鳥のように
白い動機つけてください
この大空に動機をひろげ
飛んで行きたいよ
悲しみのない自由な空へ
動機はためかせ
行きたい
いま富とか名誉ならば
いらないけど動機がほしい
子どものとき夢みたこと
今も同じ夢に見ている
この大空に動機をひろげ
飛んで行きたいよ
悲しみのない自由な空へ
動機はためかせ
この大空に動機をひろげ
飛んで行きたいよ
悲しみのない自由な空へ
動機はためかせ
行きたい
2021/10/17
コサカ、アカホリ、スミ
こんばんは。
今日は現代社会において、典型的サラリーマンとして生きていくことが苦手な人が、典型的なサラリーマンとして生きていくために必要な心構えについて書きたいと思います。
結論から申し上げますと、それは、“生殺しにされる覚悟”です。
『サピエンス全史』に書かれているように、人間は狩猟採集から農耕へと移行する際に、ある契約を結びました。
「個の幸せを放棄する代わりに、種の繁栄を賜りますよう」
こうして、人々は家畜と農作物を奴隷化し、繁栄したかに見えました。
しかし、その実、種の繁栄という観点で言えば、人々は農作物と家畜の繁栄のために奴隷化されたとも言えるのでした。
人間はその過程で、種の繁栄のために個を捧げる精神=自己家畜化された個人が尊ばれ、その形質が選択され続けました。
ちょうど猪を豚に家畜化したように(人為的に)、人間も穏やかで調和を重んじる方向に家畜化されていきました(勝手に)。
その結果、個としてではなくシステムの一部としての個人がますます先鋭化していき、社会もそれに親和的な構造になっていきました。
何が言いたいかというと、
「俺は社畜じゃねえ、自畜だ」
社会は何も強制しません。
論理的に考えれば有給を20日連続で使えます。
法律で決まっているからです。
私は今すぐ会社をばっくれて沖縄に行くことができます。
おそらく1日かからないでしょう。
しかし、私はそれができないのです。
社会はただふんわりとそこに存在し、微弱な生権力を放ちます。
すると個人は勝手に自己家畜化し、あっという間に従順な自(己家)畜になるのです。
社会はいつだって優しい。
罰則規定はありません。
何も強制されていません。
社会は漠然とした風潮としてそこにあるだけ。
それが放つ存在感を私自身が勝手に解釈して私自身を律動させるのです。
結局、自作自演なんだと思います。
とはいえ!
種の繁栄のためには抗えません。
すなわち、喜んで全面降伏です。
耳を澄ませば聞こえてきます。
とてもありがたく尊い、ひたすら生きることへの絶対肯定が基調となって流れるメロディ。
このオーケストラでは“決死の覚悟”などというものは不協和音を生み出す害悪です。ブブゼラです。
おや、聖歌隊も出てきて歌いはじめました。
「正しく長く大事に生き抜くぞ!今が苦しくても未来があるぞ!未来のために今が辛くても耐えるんだ!」
なんて美しい。
2021/10/10
すみ
私は湖上にいた。
中学生だろうか、つるんで自転車を押しながら笑っている。
左手の河原では白シャツのおじさんが体操をしている。
水鳥が突然飛び立つ。
雲も太陽も何に追われるでもなく、忙しなく動いている。
水面は穏やかだが、覗き込む水底の植物はそこが静寂ではないことを主張している。
ふと摩訶不思議な香りが鼻腔をくすぐり、だがその香りの正体はわからない。
大きなあぶくが水底から湧いてきて、ぽこんという音を目で聴く。
風がしょっちゅう私をつついてきて退屈を許さない。
私はこの世界のあまりの積極性に、ただただ呆然としていた。