参加者:スミ(L)、ウノ、センダ、カトウ
昨年の西岳P1尾根、本院岳ダイレクト尾根の登攀で戸隠のポテンシャルを確信した私たちは、今回記録のない本院岳北西尾根の登攀に挑んだ。
▲赤線が今回のルート(1日目以降)
品沢高原までレンタカーでゆく。戸隠支所で1200mまで除雪されているという情報を得たいたが、そのだいぶ手前までしか侵入できなかった。眠いので出発時間を延長して眠る。
2/8 取り付きまで辿りつかない 曇りときどき雪
8:56 奥裾花ダム
12:23 裾花川本流分岐
17:00 トクサ沢から600mほど進んだ河原
適当に林道を歩いて、裾花川本流への分岐へ。ここから計4回渡渉を行った。私は下半身裸×ネオプレインソックススタイル。ウノさんは薄氷の上を転げ回りながら渡渉していた。カトウボーイはウノさんのトレースに騙されて呑気についていきドボン。とにかく渡渉に時間がかかって全然進まない。高巻きの際に私リードで10mfix通過を行った。
その夜は湯たんぽと乾いた布を駆使してカトウボーイの靴を乾かすことに全力を尽くした。センダさんはスコップを忘れたことに気づいた。
▲林道歩き
▲ローリング渡渉
▲木曽殿アブキ
▲4回目の渡渉
2/9 本院岳北西尾根 雪のち曇り
6:50 トクサ沢から600mほど進んだ河原
12:20 本院岳北西尾根取り付き(1200m付近)
16:40 本院岳北西尾根1600m付近
夜、酸欠になり目が覚める。降雪がテントの表面を覆い、空気の循環が滞ったためだ。相当に雪が積もっているようだ。結局この一晩で30cm以上の積雪があった。
昨日の進み具合を考慮するとこのまま谷底をひたすら進むのは時間切れになる可能性が高いため、1250m付近まで標高を上げ、トラバースして本院岳北西尾根に取り付くことにする。尾根の末端から取り付く野望は早々に絶たれてしまった。降雪の影響もあり、久しぶりにがっつり肩ラッセル。カトウボーイはヒーヒーだったので、私が彼のテントを持ってあげた(下山まで)。雪は行動中も降り続いていた。水分をたっぷり含んでいるその雪は容易に私たちをぐしょ濡れにした。中々のラッセルの後、本院岳北西尾根に合流。
テント内で靴を脱いだら靴の中で靴下が凍り付いており、足の感覚が危うくなっていた。この靴はもう駄目だ。カトウボーイはスコップの柄を紛失して落ち込んでいる。これによりパーティの半分しかスコップを持っていないことになった。本日の進度次第では撤退も視野に入れていたが、ここまでこれたらなんとか行けそうだ。ただ、電波が入らず正確な天気がわからないのが不安である。
▲びしょびしょラッセル
▲びしょびしょトラバース
▲穴にハマるカトウ
2/10 本院岳北西尾根 晴れのち吹雪
6:50 本院岳北西尾根1600m付近
13:07 本院岳山頂
17:00 西岳山頂より150mほど手前
朝一で懸念の毛虫マークを処理。大したことない雪壁だった。その後、最も警戒していたナイフリッジ状地形に突入した。警戒していたほどでは無かったが、ブッシュと岩がいやらしくMIXされたアップダウンが延々と続く。ただ、5m懸垂1回、10m懸垂1回以外はロープを出さずに済んだ。そして吹雪のなか本院岳へ登頂。ただ、この時点で10日中の下山は時間的にかなり厳しい状況。進めるところまで進んで、適当な所で幕営することにする。
西岳の登りの鎖場付近は切れ落ちており非常に危険であった。鎖場のコルまで、私リードで15m、鎖場の岩場を私リードで40mのfix。鎖場の40mの後半は純粋な雪壁となっており、戸隠らしい手応えのある除雪登攀であった。カトウボーイは鎖場から雪壁の移行で苦戦したようだ。このあたりから降雪と風の勢いも次第に増してくる。フォロー最後のウノさんを待っていると、ロープを解除して私の上方で待機していたセンダさんの足元が雪崩れた。破断面は40-50cmほどあり、雪崩sizeは2以上あると考えられる。下はもちろん戸隠の絶壁だ。センダさんは「ウワア」などと言ってジャンプをし安定した雪に飛び移ったお陰で無事であったが、流されたら9割以上の確率で命はなかっただろう。これは本当に恐ろしかった。カトウはセンダさんの更に上方にいたため無事、私は雪崩た斜面の側方の尾根上でセルフをとってビレイしていたので無事、ウノさんは登攀中に雪崩た雪をかぶり首がイカれそうになったそうだが無事、私のザックは雪崩た雪面とともに谷底へ吸い込まれそうになったがとっさに私が掴んで無事。本当によかった。センダさんは「また死にそうになっちゃった...」と落ち込んでいた。
さらに10mほどロープを伸ばし、雪崩の心配のない場所まで移動。そこから少し進んだところで、泊まることにした。稜線上ということもあり風雪が凄まじく、テントを設営するのはかなり厳しそう。ウノさんの提案で雪洞を掘ることにした。入口を大きく掘ってブロックで蓋をするスタイル。掘り終わって中に入る頃には全身びしょびしょで本当に最低な気分であった。そしてその影響もあり、とにかく寒い。連日のびしょびしょ宿泊で保温力が著しく低下したシュラフに全身が今山行最高びしょびしょに濡れた状態でくるまり4時間くらい横になった。空気穴を空けても雪で一瞬で埋まってしまうため、また酸欠になった。
▲懸念の毛虫マークの雪壁
▲こんなトラバースを繰り返す
▲しばしば懸垂
▲本院岳山頂
▲鎖場のコルへのfix
▲鎖場と雪壁を登ってきたカトウ
▲破断面
2/11 下山 吹雪のち晴れ
6:55 西岳山頂より150mほど手前
8:53 P1山頂
15:14 熊の遊び場基部
19:30 品沢高原にて車を回収
何としても下山せねばならぬ。だが、雪洞から出ると昨日と同じ猛吹雪。今日は回復傾向なはず。信じて準備するも、全員一抹の不安は拭えない。そして、吹雪であらゆるものが瞬間凍結され、装備の装着にやたらと時間がかかった。
出発してから1時間ほどで晴れ間が覗き、いい感じ。私が1回ルーファイをミスった以外はP1までほぼ滞りなく進んだ。P1尾根の下降は雪崩を最大限に警戒しコンテ、fix通過、懸垂を織り交ぜながら進んだ。また、去年P1尾根を登攀&下降した際より明らかに雪が多く、トレースも無いため、ルーファイも相当に慎重に行った。
熊の遊び場まで、懸垂2回とfix通過3回とあとはコンテ。蟻の門渡りの通過は中々に恐ろしかった。また、蟻の門渡りの後のワンポイント登り返し点では、ウノさんがリード中に雪庇を破壊して滑落するなど賑やかな感じ。熊の遊び場からは懸垂2回で安全圏へ行けた。
ここまで戻ってこれて本当に一安心。あとは頭を殺して歩き続けるだけだと思ったら途中1回だけ懸垂があった。そしてヘッデン残業の末、車デポ地に到着。最後はカトウと競争して、私が一等賞!
温泉入って、大阪王将に行った。
▲朝、雪洞から這い出る
▲ロープを伸ばしていく
▲蟻の門渡り
▲いい天気
▲ギャップを登り返す
▲車
良い山行だった。
【メモ】
①林道歩き〜尾根トラバース
0937 ダム周辺
距離:5km
ラッセル:膝下、湿雪
時間:2h4m
登山状況:林道
1127取り付き
距離:3.3km
時間:6h
ラッセル:3回の渡渉あり(うち一回は裸足)
登山状況:谷を右へ左へ縫いながら進む。ロープも一回出した。ラッセルは膝下程度。
1748谷から出て、尾根トラへ
②尾根トラバース〜裏ダイレクト尾根取り付
0640出発
距離:2.9km
時間:6.5h
ラッセル:緩傾斜箇所は膝、急傾斜箇所は太もも
登山状況:谷の横断で、アップダウンを3回行った。谷底はオーバーヘッドラッセルの箇所も。
③尾根取り付き〜バリ区間前
1310裏本院ダイレクトルート尾根取り付き(1320m)
距離:1km
標高差:300m
時間:2.5h
ラッセル:膝
登山状況:シンプルな登高が続く。
1540ダイレクトルート尾根上1620m
④バリ区間〜本院岳頂上
0640出発
距離:1.5km
標高差:400m
時間:6.5h
ラッセル:膝
登山状況:懸垂下降2回や藪漕ぎ木登りクライミング、稜線上のバランシーなラッセルなど、テクニカルな要素がある。
13:20本院岳頂上
⑤本院岳〜p1下降点
14.1 15.8
距離:1.7km
標高差:プラマイゼロ
時間:7.5h
ラッセル:すね
登山状況:吹雪、視界不良、fixした
かなり悪い状況での登山
⑥p1下降〜熊の遊び場
距離:1km
標高差:300m
時間:6h
ラッセル:膝
登山状況:懸垂、fix通過を含む複雑な下降
腫れていないときびしい。
⑦くまの遊び場〜広場
16.6 18.7
距離:2.1km
標高差:550m
時間:2h
ラッセル:スネ〜膝、トレースあり
登山状況:簡単な下り。
⑧広場〜駐車場
距離:4.8km
標高差:ほぼ平坦
時間:3h
ラッセル:すね〜足首
登山状況:林道まじりの道
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