日程:2019.8.1〜8.6
参加者:コサカ(L)、ナカジマ、スミ
チーム京大オゥールで称名滝に挑んだ。1回の敗退の後、オール右岸からの完登に成功した。
以下に記すグレードは主観によるものである。
8/1
コサカさん宅に集合。コサカさんカーで立山へ。
食料を立山で購入した後、取り敢えず称名滝を見に行く。
滝見の橋は滝壺から50mくらい離れているはずだが、瀑風が凄まじい。飛沫がぱしゃぱしゃかかる。
デカい。
水量ヤバい。
死にかねない。
というのが率直な感想。コサカさんナカジマさんの手前、「これヤバいっすね〜」と本当はそんなにヤバいと思ってないような口調で呟くに留めたが、背筋はぞわぞわ。去年も称名滝へ来ているコサカさんナカジマさん曰く水量多め?らしい。
駐車場で羽虫に纏わり付かれながら晩飯を食べてるうちに「まー、なんとかなるでしょ」という気持ちになってくる。明日のギアの最終確認をして、就寝。
▲8/1の称名滝
8/2 晴れ後雨
5:50取り付き
6:00登攀開始
9:001p目終了
10:202p目終了
11:403p目終了
12:404p目終了
13:155p目終了
16:256p目登攀開始
17:156p目終了
18:007p目終了
滝見の橋の左側から川床へ下降する。取り付きはもはや台風の中であった。風速15mの風雨。すぐ近くにいるのに叫ばないと声が通じない。こんな取り付きがあるか。
▲取りつき
1p目コサカさんリード35m
10mほど登ると瀑風帯から脱出。全体が濡れており苔むしたフェース。コサカさんは縦に走っている茶色いいかにもヌメりそうなバンドを上に逃げてしまいルートをロスト。茶色いバンドを横断するのがポイントらしい。ナカジマさんがフォローで終了点を修正する。私はユマール。
▲1p目
2p目ナカジマさんリード15m
右上していくピッチで、5.9と言われている。ここも1p目と同じようなコンディション。ナカジマさんはクラックを足場にして登っていた。TCproが馴染んでないらしく意外と苦戦したとのこと。コサカさんと私はユマール。
▲2p目
3p目ナカジマさんリード30m
5.11−と言われているが、ナカジマさん曰く5.10+くらい?とのこと。少し被っている抜けを突破すると、スラブが現れる。このピッチはコンディションが悪いと濡れているらしいが、今回はほぼ乾いている。ナカジマさんが安定したクライミングで抜けていった。ナカジマさんのクライミングは見ていて本当に惚れ惚れする。後ろから見ていて落ちるイメージが全く湧かない。私が前穂高岳北尾根のノーロープ区間を登る時「こんなとこじゃ絶対に落ちない」と確信して登るように、ナカジマさんは称名滝の核心を登っているのだろうか。コサカさんと私はここもユマール。
▲3p目
▲3p目をユマールする私
4p目スミリード50m Ⅳ
所々乾いたスラブ。50mロープいっぱいでピッチを切る。ナカジマさんが去年登った際は70mロープだったため1pで4段目落ち口まで抜けられたらしい。ビレイ点すぐ下にナカジマさんはフォロー、コサカさんはユマール。
▲4p目
5p目スミリード15m Ⅲ+
下部はもじゃもじゃを掻き分けながらの登攀。上部は一部岩が浮いている区間があり、少々ビビりながら4段目テラスに到着。ナカジマさんはフォロー、コサカさんはユマール。ここでユマール中のコサカさんの肩に落石が命中。どうやらロープにテンションがかかる際に岩が剥がれたようだ。コサカさんは大丈夫そうだが、ロープの芯が剥き出しになってしまった。芯が剥き出しになった部分に結び目を作って応急処置を施す。
▲5p目
私とナカジマさんは続けてフィックスを張るために3段目へ。去年ナカジマさんが登った際は4段目落ち口をジャンプ(称名ジャンプ)して左岸へ渡り、左岸の乾いた岩を登攀したようだが、今回は水量が多くて無理そう。右岸から攻めることにする。
一段上のテラスに上がって登攀開始。
▲3段目
6p目ナカジマさんリード40m Ⅴ−
下部は乾いている。フォローで登りながらビビる。超ヌメる小さいスタンスを繋いでトラバース気味に登る感じ。足が滑りそうで怖かった。登る前にギアの受け渡しをするのを忘れており、ランナーはマイクロカム2個(うち1つは外れていた)。リードしなくて良かった。
▲6p目
7p目スミリード25m Ⅲ
水流際の簡単なトラバース。次のピッチで3段目を抜けられそうだが、水を被りながらの厳しい登攀になりそうだ。
4段目のテラスに戻るとコサカさんが焚き火をおこしてくれていた。夕飯マ・マーのパスタを食べて就寝。
▲4段目のテラス
雨が降り始めた。それはどんどん強くなり、脆弱なツエルトを貫通し、地面には洪水を引き起こしていた。全くもってぐっすり寝ていられる環境ではない。ツエルトでは雨を防げないので、ナカジマさんと一緒に岩小屋状になっている岩壁に身を寄せる。コサカさんは完全にツエルトに閉じこもっている。岩小屋の正面に位置するハンノキ滝はまさに白龍と化しており500mに及ぶ長大で肉厚な身を絶え間なくくねらせていた。
8/3 晴れ
ガタガタ震えながら微睡んでいると周囲が明るくなってきた。雨も止んだ。結局私とナカジマさんはほとんど眠れなかった。コサカさんは防寒具を1枚持ってきていたためか眠れたようである。
称名滝は案の定かなり増水していた。食料の余裕もない。何より、酷い夜で心が挫けた。とりあえず登らないことに決まり、寝る。お日様が暖かくよく寝ることができた。コサカさんに起こされると12:00近くであった。
巻道で降りて、サエキガイド宅のログハウスへお邪魔させて頂き、温泉に入り、寝た。
8/4
カメラマンのハシモトさんとと合流。
称名道路が落石のため通行止めになっていることがわかり不穏な空気が流れるが、午後には開通しておりみんなニッコリ。
のんびり1日を過ごす。
8/5 晴れ後雨
6:55取り付き
7:401p目終了
9:202p目終了
10:253p目終了
11:254p目終了
11:505p目終了
13:156.7p目終了
14:308p目終了
再び称名滝へ。
駐車場で2人目のカメラマンのヤマギシさんとも合流。ハシモトさんと2人で大量のバッテリーと大量のドローンを乳母車のような台車に乗せて展望台まで運んでいた。
1p目コサカさんリード
一回登っているためスムーズに終了点へ。ナカジマさんは行動食を忘れたことに気づいて車に戻っていった。ナカジマさんはフォロー。私はユマール。
2.3p目ナカジマさんリード
流石の登り。時折テンションをかけてムーブを確認したり、昨日調達したブラシで苔むした岩をコスコス磨いていた。私とコサカさんはユマール。
▲2p目をお掃除
▲3p目
10mくらい進んでから行き詰まる。モチヅキの小ハーケンを極めてから渋々デッド。3日前にリードしたルートと同じはずなのに。不思議だ。コサカさんとナカジマさんはフォロー。
5p目コサカさんリード
ナカジマさん、私共にフォロー。4.5pは少し寝ているためユマールよりもフォローで登った方が早い。
4段目落ち口へ出るとまだお昼前。3日前よりも大分早いペースである。3段目上の河原でも泊まれる上に、6.7pはロープをfixしているのでとっとと登ってしまうことに。
▲残置回収
6p目はユマール。7p目のトラバースはfix通過。
▲7p目
8p目コサカさんリード35m Ⅴ+
先に8p目取り付きに着いたのが私とコサカさんだったため、ナカジマさんが登ってくるより先に登り始めることにする。この水流を被りながらのピッチは沢ヤとしては非常に魅力的で是非ともリードしたいところ。魂のリードジャンケンの末、コサカさんリードすることに。このピッチはコサカさんをして30分以上かかった。ビレイ点からはコサカさんの姿が見えず、かなり心配だった。そして、コサカさんが登り切るのとほぼ同時に雨が降り始める。雨足はどんどん強くなっていく。もたもたしていると増水してこのピッチを登れなくなる。また、このピッチはフォローも落ちられない。落ちたら水流とロープで鯉のぼり状態になりかねない状況だからだ。迅速かつ確実に登らなくてはならない。水流を被り、壁から剥がされそうになりながらもなんとか抜けた。ナカジマさんも無事突破。直後に8p目の登路は水流に覆われた。
▲8p目
3段目落ち口の河原はとても広い。しかし、一帯は2段目の滝壺から発生する瀑風と飛沫で暴風雨の様相を呈している。同時に、かなりの降水、側壁からは岩雪崩も発生しており、阿鼻叫喚といった状況。そしてとても寒い。なんとか噂の岩小屋を見つけ出し、避難。中は降水と瀑風を避けることができ、3人が寛げるくらいのスペースはある。しかし、ここで妥協してはいけない。夜悔し涙を流さないためにコサカさんを筆頭に整地に精を出す。岩小屋内の石は掘り起こして徹底的に排除。そして仕上げに岩小屋内ツエルトを建築。ちなみにその過程で私は右手小指を岩と岩の隙間に挟んでしまい、負傷。10/1現在も少し違和感が残る。その犠牲の上に寝床は完成した。次に訪れる3段目落ち口宿泊民が奇跡のような岩小屋を発見し感激することに疑いの余地はない。
▲3段目の河原
▲岩小屋
ガスを空焚きし、なんとか顔面と手のひらだけは乾かすことに成功。3日前の反省を活かし私はウールの防寒着を1枚用意していたためレスキューシート+シュラフカバーでもなんとか寝ることができた。ナカジマさんは寒くてあまり眠れなかったらしい。
夕飯はマ・マーのパスタを食べた。
8/6
6:25取り付き
7:559p目終了
8:5510p目終了
10:1011p目終了
11:1012p目終了
12:0013p目終了
15:50大日平
17:00称名道路
2段目の登攀を始める。
9p目ナカジマさんリード40m Ⅳ+
右上ぎみにトラバースする。ラインどりが難しい。際どい3点支持の箇所で大き目の浮石が点在しており気持ち悪い。私とコサカさんともにフォロー。
▲9p目
10p目スミリード50m Ⅲ+
段々になっているフェースを直上する。コサカさん、ナカジマさんはフォロー。
▲10.11p目全景
11p目コサカさんリード30m Ⅳ+
右上気味に登る。上部が非常に脆い。ナカジマさんがフォローで登攀中、ホールドに少し手を掛けた瞬間に一抱えもあるフレークが剥がれ落ちた。幸い軽傷だったが、後ろから見ていた私は足の上に落下したように見えて肝を冷やした。スミもフォロー。
▲11p目
11p目を終え2段目落ち口の狭いテラス(瀑風テラス)に到着。瀑風テラスの名前の通り1段目の瀑風が直撃し続け、居心地が悪い。
▲瀑風テラス
12p目ナカジマさんリード40m
最初コサカさんがリードに挑むも、最初のボルダームーヴが難しく、ナカジマさんに交代。傾斜も強いため、コサカさん、私はともにユマールで時間短縮。
▲12p目
13p目スミリード40m Ⅳ
スラブ。4段目以来の日光を浴びながらの登攀。暖かい。ウィニングラン的なピッチと聞いていたので気楽に取り付くが、そうでもなかった。ナカジマさん、コサカさんともにフォロー。
▲13p目
1段目落ち口に到着。奥には称名廊下がひたすらに続いていた。ひとしきり喜んで休んだ後、右岸を藪漕ぎして大日岳登山道への脱出を図る。
2時間程登ったところでヤブとドロの壁に行く手を阻まれ、スミリードで2ピッチ登攀。1ピッチ目はランナーが取れないなか浮石に乗ってか細い草に手を伸ばすような悪い登攀を強いられた。また、1ピッチ目終了点でセルフを取らずにウロウロしていたら10m程滑落したのは非常にヤバかった。幸い木の根に足が引っかかり止まったが、止まらなかったら崖から射出される形になり、骨折は最低保証だった。
▲藪漕ぎ
壁を超えると大日平に出て傾斜は無くなった。しかし、藪。google earthを躊躇なく使用し、藪の薄そうな箇所を繋いで、最小限の労力で登山道と合流した。
▲大日平
8/8
ナカジマさんは称名滝4段全ピッチのフリーソロに成功した。