2021/10/10
すみ
私は湖上にいた。
中学生だろうか、つるんで自転車を押しながら笑っている。
左手の河原では白シャツのおじさんが体操をしている。
水鳥が突然飛び立つ。
雲も太陽も何に追われるでもなく、忙しなく動いている。
水面は穏やかだが、覗き込む水底の植物はそこが静寂ではないことを主張している。
ふと摩訶不思議な香りが鼻腔をくすぐり、だがその香りの正体はわからない。
大きなあぶくが水底から湧いてきて、ぽこんという音を目で聴く。
風がしょっちゅう私をつついてきて退屈を許さない。
私はこの世界のあまりの積極性に、ただただ呆然としていた。