参加者:Lスミ、サイトウ、ウノ


薬師峠に定着し、黒部川上ノ廊下、真川鳶谷、黒部川赤牛沢の継続遡行を行ってきました。
今回は黒部川上ノ廊下の遡行の記録です。


8月6日
18:00に京都でサイトウさんの車に乗り扇沢を目指す。
途中筆者の怠慢により、ナビゲーションを誤り、道を間違える。高速代が跳ね上がり、筆者は居心地が悪くなってしまった。


8月7日
2:00に扇沢に到着。就寝。
6:00起床。扇沢の駐車場には霧が立ち込めており、小雨も伴っている。ずいぶん前から分かっていたことだが、天気がかなり際どい。最新の天気情報と、奥黒部ヒュッテの情報を持って、全員で話し合うそ結果、今日の入山は控えることになった。筆者の実家が長野にあるため、ひとまずそこへ避難し、天気の経過を見守ることにする。昼寝をしたり、銭湯に行くなどした。
この日の夜は偶然にも地元の一大イベントである花火大会が催される日であったため、偶然居合わせた筆者のいとこ(高校3年生)も交えて男4人で鑑賞。なぜこの時間にこのメンバーでこの花火を鑑賞しているのだろうか、という素朴な疑問が浮かばないでもなかった。


8月8日
天気予報と奥黒部ヒュッテの情報を確認したところ、9日入山であれば天気は問題ないようだ。薬師峠で後発隊と合流することを考慮すると、できれば計画通りに滞りなく遡行したいところである。
しかし、これだけ下界で甘やかされてしまうと今更入山するのが億劫になってくる。しかも、これから行くところが、そこそこ能動的に生きようとしないと生きれないようなところなのが、より一層気分を億劫にさせた。


8月9日
6:00筆者家発。動き出してしまえばこっちのものである。これからあの上ノ廊下へ行く、と思うと扇沢へ向かう車の中ではすでにわくわくしてきた。
7:30のトロリーバスに乗り込み黒部ダムへ。
黒部ダム駅からまずは奥黒部ヒュッテを目指す。
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(黒部ダム)
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(観光放流)
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(ダムの水位が低い?)
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(ザックを置く際に誤って下に巻き込んでしまい、ウノさんのメットが破断してしまう。必死の補修を試みているが…)

11:30平ノ渡し場に到着。平ノ小屋で上ノ廊下についてきいてみると、どうやら今年はまだ上ノ廊下を遡行した人はいないらしい。今回、我々が遡行に成功した場合、2018年度初遡行となるようだ。そう考えると、一層やる気が出てくる。ただ、遡行した人がいないため、全く上ノ廊下の状況がわからないので、くれぐれも気を付けるように、という忠告も頂いた。気を引き締める。

12:00乗船し、対岸へ渡していただく。無料なのは驚いた。
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(船の上にて)

10分程で対岸に到着。この先ははしごでかなりの箇所が整備されていた。
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(有難い)

13:50奥黒部ヒュッテ着。奥黒部ヒュッテのご主人に挨拶へ行く。小屋のご主人からは、今年遡行した人はまだいないということと、多分きみたちじゃ無理だということと、引き返す場合は必ずまたここへ寄って報告するように、ということを言付かった。
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(奥黒部ヒュッテ)

14:30入渓。東沢谷から入る。黒部川との合流点のへつりでいきなり胸まで浸かる。今日は浸からない、浸かりたくないと豪語していたウノさんも浸からざるを得なかった。黒部川の洗礼である。
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(合流点のへつり)

合流した後は河原歩きが主となる。
単独で渡渉できる箇所もあれば、スクラムを組まないと渡渉できない箇所もいくつか出てきた。
サイトウさんの体調が優れないようなのが気になるが、恐れていた黒部の水量を前に手も足も出ない、ということは全くなく、一安心という感じである。やはり、水量は例年より少ないのだろうか。
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(穏やかな渡渉。)

この日は熊の沢の出合から少し進んだ所で幕営。
サイトウさんの体調は明日の朝再度判断することにする。


8月10日
5:00出発。
広い河原を渡渉を繰り返しながら進む。黒部の水は滅茶苦茶冷たい、という噂を聞いていたが、そうでもない。何だったら、奥の深谷の方が冷たいくらいだ。
進んでいくと下ノ黒ビンガが見えてきた。
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(下ノ黒ビンガ)

下ノ黒ビンガの手前で泳ぎ渡渉が出てくる。上ノ廊下で初めての泳ぎ渡渉だ。一応ロープを出す。トップは筆者。ロープ(25m)の長さがギリギリになってしまった点を除けば、特に問題はなかった。
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(初めての泳ぎ渡渉。)

そして、下ノ黒ビンガにたどり着く。デカい。
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(下ノ黒ビンガ)

いよいよ、核心部、口元ノタル沢。最初はノーロープで挑んでみるが、押し戻されてしまう。再び筆者がトップでロープを出す。今回は空身。ロープは先ほどの反省を生かして、50mロープを使用。空身で行くとそこまで難しくは感じなかった。岩にメインロープで支点を取り、FIX。全員無事通過できた。ロープの長さは50mでギリギリであった。
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(口元ノタル沢の様子を伺う)
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(ノーロープで挑む)

この辺りは日陰なので、全身ずぶぬれになると中々に寒い。その後も何度かずぶぬれになると、広い河原に出た。日当たりが良く、水流も穏やかで、ピクニック気分になる。
その先には上ノ黒ビンガが聳えていた。上ノ黒ビンガには圧倒された。天気のいいときに来れてよかった。上ノ黒ビンガの先には美しい滝があり、そこから後ろを振り返ると、滝と上ノ黒ビンガと水流と青空の組み合わせがとても美しかった。その光景は上ノ廊下の遡行で最も心奪われる風景だった。
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(全身ずぶぬれで日陰をへつる。寒い)
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(ピクニック気分)
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(上ノ黒ビンガ①)
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(上ノ黒ビンガ②)
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(上ノ黒ビンガ③)
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(上ノ黒ビンガ④)
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(上ノ黒ビンガを振り返って)

上ノ黒ビンガを通過すると金作出合に着いた。雪渓がかなり後退していた。
その後は、泳ぎセクションが連続する。ロープを出すほどではなく、楽しみながら渡渉する。それにしても本当に水がきれいだ。
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(金作出合)
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(泳ぎ①)
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(泳ぎ②)
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(泳ぎ③)

数々の泳ぎセクションを突破した先には赤牛沢出合があった。ここまでくれば、本日の目的地の立石は目と鼻の先だ。ちなみに赤牛沢は今回の合宿の最後に遡行した。
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(赤牛沢出合)

立石についてからは、釣りなどを楽しんだ。
夜に宴会をしていたら、雨に遭ってテンションが下がる。
その後も断続的に雨が降り、増水が少し心配になった。
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(竿は木の枝)


8月11日
5:00出発。
水量はどうやら問題なさそうである。一安心。
すぐにこの日の核心が出現。流れが強い泳ぎ渡渉。左岸から明らかに巻けそうだが、ここまで一回も巻いていないので、折角だから最後まで巻かずに突破したい。右岸をへつっていけばロープは出さなくても良さそうだ。筆者がトップを行く。へつりは問題なく突破できたが、乗越の部分で水流をもろに受けてしまい、動けなくなる。はがされないように必死にへばりついて、何とか水流を逃がし、突破。後続はそれほど苦労せずに突破していった。体感としてはこの箇所は口元ノタル沢に次いで難しかった。
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(突破ラインを探る)
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(乗越の手前)

このときは見逃してしまったが、泳ぎ突破して進むとすぐ右岸に立石奇岩があったようだ(赤牛沢遡行のアプローチの際に確認)。過去の記録通り、立石奇岩の先はあまり難しい箇所は無かった。わいわい泳いで、スクラム渡渉して、へつってを繰り返していると、だんだん川幅が狭くなっていった。そして、大東新道と合流し、薬師沢小屋の橋が見えた。
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(途中の支流の登りやすそうな滝)
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(薬師沢小屋)

薬師沢小屋へ挨拶へ行き、正式に2018年度黒部川上ノ廊下初遡行の称号を頂く。3人で喜びを分かち合った。


上ノ廊下遡行は計画通りとはいかなかったが、天気の状況に臨機応変に対応し、ぎりぎりのところで、遡行を成功させることができた。突破が難しい箇所を全て正面突破できたことと、2018年度の初遡行というおまけまでついてきてくれたので、なお嬉しい。
今回私たちの遡行が成功した裏には例年よりも黒部川の水量が少なかったことが挙げられるだろう(志水哲也さんのブログには今年は例年の7割程度の水量と記載されている)。もし平年の水量であれば全ての箇所を正面突破するのは無理だったかもしれない。
ただ、遡行を終えた今言えることは、上ノ廊下の遡行は本当に楽しかった。もう本当に楽しかった。今までの沢登りの中で断トツのナンバーワンだった。また、こんな山行をしたい。ということだ。
最後に、今回の上ノ廊下遡行に付き合ってくださったウノさんとサイトウさん、本当にありがとうございました。今回の遡行でも自分がまだまだお二人に遠く及ばないことを実感しました。今後も精進します。

p.s.
この後、薬師峠へ行き、15:00に後発隊と無事合流。上ノ廊下遡行ではこの合宿は終わらない。俺たちの合宿はこれからだ。~fin~